戦後を語る時、何を思い浮かべるのでしょうか?
今であれば沖縄米軍基地がしばしば注目されますが、身近なところにもあるもので、例えば食糧も一例になるでしょう。
日本の小麦の輸入国を見ると、米国、カナダ、オーストラリアの三国から殆どを調達し、その全ては実は戦勝国ばかり。小麦を使った食品を挙げればたくさんありますね。パン、うどん、ラーメン、スパゲティ、マカロニ、餃子の皮、味噌、醤油、クッキー、ケーキ、ケーキ、天ぷら、揚げ物の衣、お好み焼きもそうですね。
色々あるけれど、需要規模でいえば、パンはやはり大きい。
元々パン食の習慣が無かった日本人にパン食を普及させたきっかけは、学校給食におけるパン食。そして、その背後には当時のアメリカの政策が影響した。ビジネスとすれば"マーケティング"に該当するのでしょう。
日本国内での小麦需要を拡大させるには味覚の洗脳が手っ取り早いとして、子供に食べさせることから始めたという深謀遠慮。人間は20歳になるまでに経験していない味覚に対しては、どうしても臆病になるもので、中には食わず嫌いにもなる。そういうこともあって、若年層から"市場開拓"に取り組んだと言われています。
そうして需要が増えた現在、どうなっているかといえば、SBS制度が導入されたとはいえ、今なお殆ど三つの国から調達しています。それが米国、カナダ、オーストラリア。いうなれば戦勝国の"ご褒美"のようなものでしょう。
ところで、いま、国内需要の90%程度を三国から調達しているけれど、本当に大丈夫?
これまでの経緯はどうであれ、これだけ小麦を食べる食文化が定着した現在、三国で凶作になればに本の食卓への影響は計り知れない。以前と変わらず、日本に輸出してくれる保障はどこにもない。自由貿易主義の論者はカネを積めば買えるとでもいうのだろうけど、穀物は単純な資本主義で語れない。
世界三大穀物は、小麦、大豆、とうもろこし。生産国各国の穀物に関する貿易政策は、国内需要を満たし、必要備蓄量を満たした上で余剰があれば輸出する、というもの。昨年はロシアが禁輸したことで、世界中の小麦相場が上昇しただけでなく、小麦需要の穴埋めでとうもろこしまで価格が高騰しましたね。
今までは何とか調達できたけれど、生産国でも足りない状況となれば輸出などする理由はない。その時、日本は?そして、日本の食文化はどうなる?
こういった、緊急事態や食糧安全保障を検討しながら、農業政策を進めるべきなんだけど、今の議論は「どうしたらアメリカに輸出機会を提供出来るか?」に腐心しているようす。TPPでは全農を抵抗勢力にした論陣を張るといった程度だし、非常に心もとない。
いつになれば「戦後」が終わるのだろう。
民間企業で出来るレベルに限界はあるけれど、経済活動レベル(国力)を落とさぬことで政治力や発言力を高める努力はしっかり果たしている。政治もしっかりして欲しい。