著者:加藤 裕子
発行:集英社新書
価格:680円
出版:2002年04月
書店でのお勧めPOPに惹かれて購入。名前から想像すると面白さは微妙な本のように想像しますが、いざ目次をチェックして、最初の数ページ読むと・・・面白いのです。
日本で発達した寿司がアメリカへ渡り、そしてアメリカナイズされて根付いている。現実はこんな風に一行で表現できるのだが、その背景には有名な「ベニハナ」はじめ、たくさんの職人さんが、日本での「粋」をアメリカ流に調整しないと食べてもらえなかった時代に起点する大変なご苦労があった。
アメリカ人の多くが寿司をファッションの1つとして食している現実があるものの、職人さんの苦労があったからこそアメリカに根付いた。
アメリカ人はもともと生魚を食べない民族。「ほぼ」生肉のレアのステーキを元とする生肉は慣れているが、白身魚のヒラメ、タイ、キスような、味覚を研ぎ澄まさないと味わえない寿司よりは、ステーキソースやフライドチキンに共通するように脂肪分と塩分とスパイスをしっかりと効かせたものを好む人が非常に多い。さらには、海苔までも見た目が真っ黒で気持ち悪いという理由で「裏巻き」やアメリカ流「巻き寿司」が出たりと、それはもう、出来る限りの工夫がなされている。
一番大きいのは、日本流の「侘び」「寂び」を店のテーマとすると、アメリカでは受けないため、昔ながらのやり方から必要の都度変更してきた歴史を垣間見ることが出来ます。
今も、アメリカにおける「SUSHI BAR」「SUSHI REST」が大幅に増えていますが、ここまで根付いたのは、アメリカ政府の健康食推奨レポートとか偶然におきた背景もあるが、職人さんをはじめとした影の努力があったからこそ。そういうストーリーを身構えせずに気軽に読める雰囲気を併せ持った一冊。珍しく深く掘り下げていますし、その割に気軽に読める、秀作ですよ。