福島原発の事故以来、否定的な一面ばかりが強調されている。
最たる意見は、原発全て停止。
一方の最も楽観的な意見は、全て風力や太陽光発電に置き換えよう、というもの。
ちなみに、大阪府の橋本知事に至っては、電力需要の半分がエアコン向けと分かった以上、電力不足に陥った最悪のケースではエアコンをきって生活すればよい、とも言い出した。有権者の一部に焦点を移した言動にしか見えないが、一所懸命頑張っていることだけは分かる。斯様に、原発へのアンチ姿勢が金科玉条のように語られているけれど、生活レベルの安定、産業活動の安定、といった視点への考察が漏れているように思うのです。
例え話を挙げるとすれば、ヨーグルト、アイスクリーム、納豆、凍り豆腐、りんごが分かり易いかもしれない。全て、緻密な温度管理と湿度管理のうえで製造されているものばかり。りんごだって、年中食べられるようになったのは、果実を冬眠させる技術があってのことで、この技術にはガスと電気が必要なのだ。こういう商品は、電気と直結しないイメージかもしれません。けれど、実は電力あっての食べ物なんです。
これで電気が必需品であることが理解頂けたと思います。
改めて、冷静に考えたい。
原発が無理なら太陽光等の再生可能エネルギーで発電すればよいではないか?との意見がありますが、発電力の安定、電気需要の変動に対する迅速な対応、電力コストの点で、実は話に成らないほど原発は優れている。感覚的には「パンがなければお菓子を食べればいい」と言ったとされるマリー・アントワネットと同じくらい太陽光発電のコストは高く、一方の原発の発電コストが安い。
但し、何か起こった時のダメージは大きい。それは不慮の事故に限定されることではなく、テロリストから原発爆破をネタに国家が脅される可能性だってある。そういうことを考えると、領空や領土、領海に対する安全保障が堅牢な国家でないと原発の安定稼働はあり得ないことが理解いただけるだろう。
そうした、安全保障にかかるコストも入れると原発の電力コストの優位性にも疑問符がつきそうだけれど、エネルギー源の分散を推進してきた過去30数年間の努力の結果として、漸く石油相場の乱高下にも耐えうる国家になってきた。こういう努力を全て捨て去ってよいのだろうか?
今目の前にある危機は、最優先で対応するべきだ。
けれど、福島以外の原発については異なる視点で考えてくれないと困る。
大衆迎合の与党が危ういのはこの点だ。民意はその時々の気分で変わるから、こういう時こそ、政治主導でしっかりと有権者をリードして欲しい。官僚だって、そういう政治家ならファンになってくれるはず。