著者:瀬島 龍三
発行:PHP文庫
価格:560円
出版:2000年07月
大東亜戦争という呼称は、戦前や戦中に使われた呼称ですが、敗戦後米国マッカーサーにより使用禁止となり、代わって「太平洋戦争」が正式呼称となり、以後、太平洋戦争となったものである。 日本国が正式に自ら使いだした呼称ではない。 この書き出しがあって「大東亜戦争」となっている。 ボク自身、太平洋戦争という呼称がピタリと来なかったところ、大東亜戦争というそのものズバリの言葉がタイトルにあり、また、著者が瀬島氏ということもあり、購入した。 「是非、読んでほしい一冊」です。
現在の価値観、世界情勢で当時を批判、回顧するテレビ番組のいかに多いことか。 非常に納得感の少ない番組や、書籍は大変多く存在するが、その点でこの本は、当時の価値観、世界情勢などが明瞭に書き上げられているの。 大変貴重な一冊である。 著者は既に有名なひとだが、当時の大本営参謀本部で作成企画部に所属していたというから、まさに頭脳部を務め上げたひとである。
著者の発言を100%信じることは不要だが、当時の情勢を側面調査したことのある読者ならば、世界情勢の認識や記述に誤りは無いと思われる。 大国同士の軍縮協定の存在、アメリカと対峙した国が「テロ国家」のような位置取りに追い込まれること、中国の広大さという物理的な性格が中国自身を政治/軍事的に統治の難しい国としていること、欧州がインドを通じて東南アジア、中国などの極東へ攻め上がってきたこと、ロシアが南下政策をとろうとしていたこと、とにかく、全てにおいて明確に記述されている点が文献としてだけでなく、記録史としても興味深く読めた一冊。
911に対する米英の対応を、大東亜戦争と連想しながら読み進めると、類似点の多さに気付くだけでなく、アメリカという国家が戦後からずーっと「軍備国家」であることに気付くと思います。 軍事国家ではなく、軍備国家ですよ。 とにかく、物量で圧倒的な優位を保持(軍備国家)し、そのうえで政治交渉を優位にすすめてゆく、という図式です。 オーソドックスながら、実に確実な戦略です。
アメリカを好きになる必要はありません。アメリカは有事における交渉時に「一国家としての人格を失う」ことが多く、この本を読みながら、国の将来を憂いてます(いつになったら、属国扱いから解放されるのか?という点で)。みなさんもアメリカのイヤなところを見ようとすれば、この本は必読です。他にない内容なので。