同情はしない、けれど反日デモは悲鳴にも見える

昨日の午後四時半、2ちゃんねるのトピックで、東京工業大学世界文明センターのウェブサーバがハッキングされて、写真のようなことになっているとの情報が。

 

さすがにハッキングされているウェブサーバーにパソコンでアクセスするのは気が引けるので、携帯からアクセスしてパシャリ。ウィルスが仕込まれている可能性もあるので、パソコンでは避けた次第。

 

その前には最高裁のウェブサーバーが同様にハッキングされたり。民間企業のほうがセキュリティが堅牢なのか、企業ではない機関へのハッキングが続いている。

 

こういった仕打ちに対して、どう思うであろうか?

呆れ返るよりないけれど、こんなことでもしない限り、鬱憤が晴れない環境に追い込まれている中国人を気の毒に思うよりない。中国人といっても、共産党員ではない人のこと。党員に統治されている人民のことである。

 

国民人口は14億人ほどいるけど、そのうち、共産党員は僅か7%弱。その僅かな層が、社会の頂点に君臨し、国や人民を統治するのが中国。93%は共産党の作った枠内で働くよりないけれど、改革開放以降拡大した貧富の格差に対する不満が、いま一番の課題。人民にとっても、共産党にとっても問題はそこに焦点を得る。

毛沢東の肖像画をデモ隊が掲げているのは、昔に対する郷愁を表すシンボルなんだと思う。

以前なら、例え貧しくとも皆等しく貧しいので、問題とならなかった。

 

でも今は違う。

特権階級は米国GMのキャディラック、或いはベンツを運転手付きで乗り込み、スーツも一流海外ブランドを身につけ、レストランだって大衆層とは異なる。

一方の大衆は各省で定められた最低賃金を僅かに上回る賃金をもとに生活する。

 

かたや資産10億円、かたや年収30万円程度。この格差が縮まる様子が無いばかりか、物価上昇もあいまって生活向上の実感さえない。会社の中では昇進する機会も少ない。要は、改革開放以降の富の再分配システムが機能していないこと、人民にも相応のメリットが分配されていないことが最大の問題点なのだ。

 

日本では以前、一億総中流意識、という言葉があったけれど、中国だとどうなるのだろう。

適当な言葉が思いつかない。

 

そういった不満をぶつける先として、反日デモがある。

共産党当局の取り締まりを免れる唯一の集会やデモが反日。

 

実際にデモ隊、或いは暴徒化した集団によって破壊、略奪されたのは日本企業製品だけでなく、RolexやDior等高級ブランド品もある。富の不平等に対する表現方法とは思うけれど、表現の自由の歴史が乏しい中国の人には、別の方法が思い浮かばないのだと思う。

 

今回の反日デモは、統治される中国人民の悲鳴だ。

卑劣な方法を採った奴らに同情はしない。けれど、これは悲鳴を表現したものだ。

 

中国に駐在する知人もいる。

極度の緊張のなかで生活する日本人に被害者が出ないよう祈るばかり。

★★★★★ 街場のメディア論

街場のメディア論 (光文社新書)を読了。

常々感じていた疑問に応えてくれるかもしれないと思って買った本。

要は「メディアは権力者へ批判さえしていれば生き残れる、正当性を保持出来る」と常々感じていた疑問に対する一冊と思って読んだもの。新聞やテレビ、週刊誌を読むと、こうした感じ方は稀なのか、それとも他にも同じ感じ方をしている人がいるのだろうか?そんな疑問に応えてくれるかも知れないと思って買ったもの。

 

結局のところ、批判さえしていれば生き残れる可能性は高いし、先ずは批判から始めることは、メディアという生業の特性上、必要なこと、ということは分った。

 

例えば、消費増税でもいいし、不審火による火事であってもいいし、記事のネタとしては何でもよい。最初の印象と、最後の結論が真逆のケースもあるはずなのに、そういう場面で必要な訂正記事を書かないことが多いのだ。つまり、警察の調査の進捗に伴い、事実が明るみになるにつれて、事態が初期報道内用から変わる場合には、自分自身でも情報収集しないと、結果として誤った初期報道を鵜呑みにすることになるのだ。訂正記事は自己批判でもなんでもない、真実を報道する行為なのに、メディア界は追跡報道が少ないので要注意ということであった。

 

他にもこんなケースも同じように違和感を持っていた。

「今日、国道で少女がひき逃げされる痛ましい事件が起こりました。こんなことが有って良いのでしょうか?」といったテレビ報道も同じこと。テレビ局側が一方的に「正義」を翳しているようなもの。だけど、その主観的な報道は何とも安っぽい。要は報道こそ価値あるサービスなのだ。事実を報道すればよいのに、なぜか価値判断まで入れて放送する。更にいえば、警察の調査の結果、誤った内容であったとしても、今度は「警察の調査方法に問題があると思われます」となるから、正直なところニュース報道番組がコメンテーター用の番組に成り下がっているようなもの。

 

いつからテレビは目を見張る存在ではなくなったのだろう。

見聞が広がるような番組を見たいし、ニュy−巣番組も見たい。

いま、こうした欲求に正面から応えてくれているのは、NHKくらいしかない。

しっかり制作費用を使って取材しているので、長期ロケが必要な番組もあるし、見ていて驚く内用もあるし、楽しい。

 

こういう番組が少なくなっている民放各社の関係者に見て欲しい番組。

とはいえ、くだらない番組でも見てしまう視聴者側も同罪。

 

視聴者側の知的好奇心の水準が低下している証かもしれない。

そんな風に思いました。

「脱原発」とは「脱○○○」となる

「原発」の部外者の企業や団体は不用意な発言をしてはいけない。例えば東海テレビ「「セシウムさん」放送とか、やってる場合ではない。政界では、もっと大きなうねりとして採り上げられているからだ。有権者としては脱原発によって、誰が活気づき、誰が影に追いやられるか見る必要がある。逆に原発推進によって何が起こってきたのかもよく理解出来る筈だ。

 

いま、脱原発を掲げ、もはや「思想家」ともいえる国内活動家が活発化している。

福島原発の事故によって其のリスクを改めて知らされ、かねてより反原発を掲げた集団が活発化しただけでなく、原発推進派の鞍替えだって起こっているほどだ。しかも、経済事情や代替えエネルギー政策は知らぬ存ぜぬとするあたり、もはや思想家と呼べるほどだ。

 

色々憶測はあるけれど、脱原発を掲げる政治家には、古い政治体制からの刷新を狙っている意図があることを忘れずに。脱原発を現実的に推進するならば、国内エネルギー政策としてエネルギー調達方針、そしてエネルギー確保の技術革新をどうするのか、その結果重要な輸出産業として検討していた海外向けエネルギー関連インフラ事業の輸出振興策をどうするのか?ここまで考えないと現実的に「脱原発」を推進することは難しいのだ。本来であれば先ず不可能とも思える議論の規模だなのに、現実には内閣でさえこの有様。本気で「脱原発」を考えているように見えないのだ。だから「原発」によって権力者となっている政界の大重鎮達を権力や機関の要所から外そうとする活動にしか見えないのだ。

 

もし、政界が独断で脱原発を推進すれば、大手企業による製造拠点の海外移転が更に加速する可能性がある。国内雇用は無視出来ないとして、国内にとどめた企業でさえ、電力不安が重なれば工場の一部を移転させるに違い無い。 

 

だからこそ、政界、経済界、そして実務を良く知る官界の三者連携して検討する必要があるのに、今回この三者バラバラなのだ。しかも閣内でさえ不一致。

 

原発によって大重鎮となった人が誰かは書かない。

政界の歴史を調べればよくわかること。

 

ネット時代は調べる気さえあれば10分で概略はわかるはず。

その後でネット以外の信頼出来る情報ソースで調べ、裏付けをとれば充分。

 

ヒントは終戦から10年程度経った頃のこと。

あの頃の政治家は、現在に課題を残したとはいえ、立派な仕事をしたと言える分類とは思う。けれど、今の時代にも大きな影響力を残すのも如何なものかと思う次第。

 

致し方ないとも思う。

こうしたことは政界だけでなく、財界だって、官界だってそうなんだ。

 

でも日本が特殊と思うなかれ。

よく調べてみればわかるはずだ。

アメリカだって、英国だって、ロシア、中国だってそうなんだから。

円高、なんとかならないか?

是非絵を見てほしい。

これは、世界主要国家の通貨がどれほど高く、或は安くなったのかを示したもの。

 

日本の他は、一部の小国家の通貨が高くなっているだけで、いわゆるG8で参加必須の国の通貨は安くなっている。まぁ、中国の人民元は除くけど。

 

大手経済新聞社に限らず、記事になっていることは

 - 日本経済の再浮揚のためにはFTAが必要。

 - なかでもTPPは無視出来ない。

 - 関税を撤廃して自由貿易を促進し、責任ある国家として責任を果たすんだ!

 - TPPは太平洋の貿易ルールを決める重要な経済圏。

 - 日本が加盟しないと韓国や中国が先に加盟する。

 - 日本は早く参加しないと主導的な立場をとれなくなる。

とまぁ、こんなことでしょう。

 

韓国の貿易がどれほど好調なことか。

前年比二桁で伸びているのは事実でしょう。

でも、日本に本当に必要なのはTPPか?

 

円高是正と思うぞ! 

TPPでも減税でもない。

もちろん公共工事積み増しでもない。

 

円高是正しかない。

先進国では日本だけ通貨が高くなっている。Fund筋と米国、英国にいいようにやられているだけのこと。リベンジはこれから!

キャッチコピーは突然にやってくる...

過去十年間、日本経済でどんなことが注目されたのか、或は注目されようとして時の政権が提唱してきたかをザックリとまとめてみた。

すると、こういったキャッチコピーは、アメリカからの年次改革要望書に準じた規制排除政策を推進するためのスケープゴートである可能性が極めて高いようです。

例えば...

- 1997年は「大競争時代」「メガコンペティション」。

- 2003年は「構造改革」「小さな政府」

- 2010年は「平成の開国」とか「第三の開国」。

といったコピー。

「大競争時代」の頃、国会討議では野党や反対論者が「慎重な検討が必要だ」として反論すると「今はスピードの時代だ」として詳細の検討をスキップされることもありました。

 

今に思えば、金融事業の規制緩和、持ち株会社制度の解禁等は日本の産業の歴史から見れば必然であった制度を廃止することだったけど、耳に心地よいコピーや危機感を煽られた演説を聞いてしまうと、目が霞むんでしまうもの。

 

具体的に見ましょう。

1997年は「金融ビッグバン」とか「円の国際化」といったサブコピーまで出てきて、バブル崩壊以降の景気低迷感を打破するには公共投資ではなく規制排除が必須とさえ言われたものでした。逆に規制排除さえすれば景気は良くなるし、多少の痛みはあるものの大きく飛躍するには必要だといった論調もメディアに多数露出。

また、金融産業についてはグローバル競争に遅れることのないよう、むしろ打って出るには金融ビッグバンしかない!といったギャンブルとも受け取れる発言もメディアでは多かった。肝心のメディアは規制改革されてないから対岸の火事、要は地上波の特権は今も続いている。

時は移り、2004年は「構造改革」。

小泉政権が「民に出来ることは民に」とのサブコピーを印籠のように翳しつつ、当時の不景気の要因は既存の規制にあるとして解散選挙まで実行。要は景気が悪い原因は規制にあり、規制の代表格として郵政を採り上げ、国民の是非を問うとして郵政解散まで行ったもの。

党内では法案に抵抗するグループを「抵抗勢力」として排除、旧来の自由民主党の票田であった農業票や郵政票を放棄してまで推進することで「本気の規制緩和」を演出。この「劇的」な演出が大衆には効くもので、郵政民営化を争点とした解散総選挙では自由民主党が大勝、小泉政権はこれ以上無い支持を得て政権を進めていた。

郵政改革によって景気が浮揚することはないことは分かっていたし、実際そうであったけれど、規制改革が景気を良くするのではないかと期待を持った人が多かったのでしょう。だからこそ総選挙では圧勝したのでしょう。

因に小泉以降は不発、というなかれ。後輩の首相達が小泉時代の政策のツケを払わされてきたようなものだ。

 

そして現在。2010年は「平成の開国」「第三の開国」。

日本は開かれた国ではないとして更なる関税撤廃を進めることで景気浮揚を図るとした菅政権。貿易立国である日本は自由貿易を主導する立場にあり、更なる開国を進めることが必要だというもの。開国をすることが目的に聞こえるが、アメリカにすり寄るふりした深謀遠慮にも見えず残念。

アメリカのターゲットはご存知の通りTPP。またの名を日米FTA。輸出倍増による雇用回復を狙うアメリカにとって悲願のFTAなのです。他の小国相手の貿易では雇用倍増は果たせないので対日輸出を物販、サービスの双方で展開するはず。

アメリカが得るものは想像がつく。農業、金融、物流、知的財産権、医療分野でしょう。日米経済調和対話を読めばすぐに分かるはず。アメリカ基準を日本も導入せよ!という趣旨なんだけど、本当に導入されたらアどうなることか分からん。

 

1994年以来、時の米国通商代表部(USTR)が来日しては同じ言葉をステートメントに残してきた。自由、規制緩和、市場開放ばかり。逆にアメリカは乳製品と砂糖は自由貿易を頑に拒んでいる。日米貿易では斯様な商品が無いから報道されていないのだろう。でも、アメリカだって自由貿易を否定している分野を持っていることをしっかりと日本国民に伝えないといけないと思う。

 

アメリカの要望、それをそのまま国民に伝えず、耳に心地よいキャッチコピーとともに演出してきた政府の努力は認めるが、その結果が現在。何とも頼りない。

 

次の転機でもキャッチコピーが出てくるはずですが、踊らされないよう、しっかりと本質を見るようにしましょう。

 

(参考)資料;年次改革要望書

アメリカも農業ではTPPを看過出来ない

こういう情報は報道されない。でもネットの時代だからこそ分かる情報を!

 

実はアメリカの畜産団体の大手たる牛乳生産者の協会だってTPPには反対している。具体的には価格競争力を持つニュージーランド産の乳製品に限定してTPPの関税撤廃対象から除外するよう求め、陳情書を昨年2010年にUSTR(米国通商代表部)へ提出している。

 

日米間の乳製品では価格競争力に自信があるようだけど、相手がニュージーランドになると自信が無いようで。理由も明確ですが...。

 

これを見た方は「そんな馬鹿な?...」と思う人もいると思いますが、これが現実。実際にTPPの交渉現場では、アメリカの関税撤廃からニュージーランド産乳製品は除外しつつ、他のアメリカ製品に対する関税は撤廃してもらうという都合の良い、良いとこ取りを突きつけているはずです。

これぞ国際協議。最初はお互いに何を大切にしているか突きつけ合うのです。

 

折角ですから意訳した日本語も付して以下にサマリーを。

◆Quote

 NMPF Insists on Total Exclusion of U.S.-New Zealand Dairy Trade in TPP: January 25, 2010

NMPF(全米牛乳生産者連合)は、TPPにおけるアメリカとニュージーランドの貿易から乳製品を除外するよう主張

 

In a letter to the Office of the United States Trade Representative (USTR), NMPF again pressed for full exclusion of New Zealand’s dairy products in the Trans-Pacific Partnership (TPP) trade agreement.

USTRに出した書簡のなかで、NMPFはニュージーランド産の乳製品はTPPの対象外とするよう再び主張した。

 

Although NMPF believed in the importance of balanced trade and in the potential for well-negotiated trade agreements to benefit the U.S. dairy industry as a whole, each agreement must be judged on its own merits.



NMPFは、アメリカ乳製品産業全体としては、調和のとれた貿易が大切なこと、また、しっかりと交渉された貿易協定によるメリットを信じているが、個々の協定はそのメリットを個別に判断されるべきと考えている。

 

A U.S.-New Zealand TPP would negatively impact the U.S. dairy industry.

アメリカとニュージーランド間のTPPは、アメリカ乳製品産業にマイナスの影響を与えるはず。

 

NMPF estimated that milk prices received by producers would drastically drop and gross revenues received by U.S. dairy farmers would plunge by a cumulative $20 billion over the first 10 years of the FTA if U.S. dairy restrictions on exports from New Zealand were fully phased out in the TPP FTA.

NMPFの予測では、もし、TPPによりアメリカとニュージーランド間で乳製品に関する関税が完全撤廃されると、アメリカの牛乳生産者が受け取る際の乳価は大きく下落、アメリカ乳製品農家の受け取り収入はFTA導入後最初の10年間で累積200億US$は減少する。

 



The letter is available here. Members of the Congressional Dairy Farmer Caucus alsosent a letter to USTR Ambassador Ron Kirk expressing their support for exclusion of U.S.-New Zealand dairy trade under the TPP.

その書簡はこのリンクで読めます。また、連邦議会乳製品幹部会のメンバーは米国通商代表部のRon Kirkにニュージーランド産乳製品の対象除外に向けた支持を表明する書簡を送った。

◆Unquote

 

こういうふうに利害が真っ正面からぶつかる時は、新たな利害関係を作ることで仲間とすると良い。そうすれば、目前の利害を相対的に小さなものとなることが多い。具体的には、両国共通の仮想敵国とか利害対象を作り、徒党を組むと良い。歴史に学べばそうなる。

 

アメリカとニュージーランドの対立は、どういう流れで消えるのだろう?まさか対日貿易で徒党を組むとか?ちなみに、ニュージーランドではTPP反対運動が起こっている。理由は単純。「アメリカは乳製品市場を開放しないだろうから、ニュージーランドの誇る世界最大の乳製品輸出企業のFonterraでさえ得るものが無い。だから加盟する理由が無い。」というもの。

 

とはいえ、アメリカが考える対日圧力はあの手この手でやってくる。

だから余計に心配になる。

 

経産省、産業構造ビジョンを公表‎! はTPP検討用資料、故に内容充実!

一年前とはなるけれど、「経産省、産業構造ビジョンを公表‎!」 といったタイトルで2010年6月6日の日経朝刊に掲載されてました。一年経った今だから分かるけど、これはどう見ても明らかに TPP政策立案に必要な基礎資料。

 

だからこそなのか、資料としての完成度も秀逸!この資料構成でよく見てほしいのは、グラフ。資料は意図を絞って作るべきことを改めて気づかせてくれる、そんな資料の典型例。まぁ、典型例だからこそ、説明もし易いのだけれど。

 

例えば、他国と比較する際、ある時期を100として指数化しているのか、それとも実数で比較しているのかは、そのページで伝えたい趣旨によって変えられている。ある資料では増減率に注目して比較するけれど、絶対額には触れないようにする工夫が随所にある。そういう意味で無知な大衆を目論み通りに導くための資料。読み進めれば分かるけど、行間ににじむのはTPP、FTA、EPAといった自由貿易協定の促進です。一番の読者は国民にあらず、たぶん農林水産省かも知れないけど...。


このビジョンを検討するにあたって作られた、経済産業省による日本の産業を巡る現状と課題には多くのデータが引用されている。この資料は、統計を上手に纏め、一定の見解を主張する優良資料の典型例とも言えるので、これからプレゼン資料等を作る人にとって大変良い教材とも言える。見栄えはいまひとつだけどストーリーや資料の見せ方は秀逸なのですよ。しかしながら、結論部分がいただけない。リンクで見ればわかるけれど、P.41以降とそれまでのストーリーは飛躍しすぎなのです。

この資料では、政策としてのターゲティングポリシー、続いて、日本の産業競争力として事業コスト(法人税)が採り上げられています。諸外国と比べて高いので日本減税を求める世論を受けてページを割いたのだと思う。

 

けれど、日本という地域を減税(安売り)する必然性はない。例えば、欧州は域内経済圏だから単純に比較する対象ではない。また、途上国は外資招致の観点から減税に踏み切った背景もあり、これも比較対象外。中国にいたっては重税の国だから比較対象にならないだけでなく、国民の人口規模の違いの点でも比較しても意味がない、とも言いたくなる資料が多い。

 

更に補足すると、中国の経済成長に注目することは良いことだけど、実態は脆弱な産業基盤であることを理解している人がどれだけいるのだろうか?同国の外貨獲得の2/3はいわゆる外資との合弁企業が稼いでいるもので、中国経済固有の競争力なのかといえば実は疑問符がつく。実力ではなく、先進国の投資によるジョイントベンチャーの成長に関する持ち分を得ていると理解すれば良い。


ともあれ、この資料は秀逸。

でも、当時公表された産業ビジョンを真に受けるのではなく、一連のデータによって、こういう仮説を持った経産省を活用するにはどうしたらよいかを考える程度で良いのではないかと思う。経済の前線を担う企業に対する営業支援を期待するのが一番。もちろん、主従でいえばあなたが主、経産省は従です。この程度での期待なら、結果がうまくゆけば経産省側も「省の功績」として主張できるし、関係者一同ハッピー。

 

この資料は当時は経済産業省独自の資料調査であるかのように理解されたけど、今となって漸く真意に気づかされる。要はTPP用の資料。けれど、資料としての充実度が群を抜いているので、マクロ観が欲しいときには是非一度見てほしい資料のひとつ。今でも時々探しては見返す資料のひとつ。

 

良い資料は、内容を更新さえすれば、物語としての秀逸さは今も健在。この資料も同様だと思う。

 

とはいえ、一番気になるのは日米経済協調対話における使われ方。これは名前こそ「年次改革要望書」や「日米構造改革協議」から変わっているけど、中身は同じ。アメリカ国益に沿うよう、日本国内を改革するよう日本に突きつける内容。日本も同様の改善要望を出しているけれど、日本の要望は一度是非確認いただきたい。愕然とする。日米双方の要求を相対的に比較すれば天地の差。誰だ?こんな仕組みを考えたのは?

 

ここまで来たら見てもらいましょう!アメリカ大使館に掲載されている日米経済協調対話の訳文とやらを

 

うーむ、如何なものかと思う。やっぱり加盟には大反対。

年次改革要望書に注目しよう

主権国家として恥ずかしいことですが、アメリカによる日本の改造が進んでいる。
日本の規制緩和や政策は日米間の年次改革要望書を見れば分かる、とも言われるほど。

今は「日米経済調和対話」と改名され、別名「新 年次改革要望書」とも。

を米大使館が堂々公表


直近では最大のトピックであった「郵政法案」はもともと、一人の政治家が始めたのではなく、1989年7月14日の日米首脳会談の際、ジョージ・ブッシュ大統領が宇野総理に提案、実現した「日米構造協議」がはじまり。その後、宮沢総理の時、具体的には1994年からはじまる、現在の「年次改革要望書」へと変わったものが始まり。この一連の関係者を称して、書籍では売国奴と称する向きもある。つまり、小泉総理が勝手に言い出したものではない。

さて、
「日米構造協議」における米国の主要な項目をあげると、
 1.公共投資の拡大 (実行。GNPの10%/10年間で総額430兆円、後に630兆円へ積み増し)
 2.土地税制の見直し(拒否。農地の保有税の上昇、)
 3.大店法の規制緩和(実行。大規模小売店鋪法として出店ラッシュ、地方にシャッター街の弊害)

年次改革要望書」における米国からの要望が、日本の施策として実現した例は、
 1.建築基準法の改正
 2.法科大学院の設置の実現、
 3.独占禁止法の強化と運用の厳密化、
 4.労働者派遣法改正
 5.郵政民営化

日本の国家としての資金力は実は郵政にある。米国の主張では、この資金が国債買い上げに使われているからこそ、外資系金融機関の日本市場への参入障壁が高い、というけれど、現実には日本の、郵政が持つ巨大な預金を市場運用資金として使いたいこと、郵便局による銀行運営に株主として関与したい、日本に進出した米国金融機関の活動を支援すること、以上三点が目的。

年次改革要望書という個別名称は、国会でも口にされない。なぜなら議事録に掲載されるから。

1990年代後半から進んだ労働者の低賃金化の背景は、労働者派遣法であるとする向きもあるし、現在の民主党はそれを修正しようとしている。やり方が下手なのが困るし、見ていてハラハラする。典型的なことは沖縄基地への対応で、立法当事者である国会が定めたこを執行する行政当事者である政治家と官僚の動きがチグハグで、案件として前進どころか後退している感じ。

今起きている数々の不都合なこと、不景気や低賃金化、GDPの停滞は、10年あるいは20年前におこったことが原因。企業だって数年前の判断が今に栄光していたりするので、政治においても同じことが言える。例えば、いま日本の発行する国債残高はGDPの二倍、約1,000兆円に上るけれど、上述した「1.公共投資の拡大 (実行。GNPの10%/10年間で総額430兆円、後に630兆円へ積み増し)」が無ければ370兆円程度であった可能性もある。こういう風に、現状を過去の政策や意思決定から紐解くと実は整合性ある物語になるものです。

こういった仕組みは当事者しか知らないのかと言えば、それはNO。

いまや情報公開が進んでいる。でも、一連のストーリーとはなっていないから意味が分からないのだと思う。

 

でも...不条理を感じたら考えてみよう、調べてみよう。

これがネット時代の有権者の責任。
wikipediaは意外なほどリベラル。全てが真実とは限らないけれど、このページで載せた程度なら、直ぐにでもここまで調べることができる。しかも裏付けと成る資料もリンクで揃っているし、ホント便利。

もっとネットを活用して、知る努力をしてはどうだろう。
本であれば下のような珍しいものもある。

国民として、当事者として、重要なことはもっと理解しようではありませんか!

 

拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)